雨漏りが起こり易い部位と雨漏り原因。
1:棟廻りからの雨水侵入(スレート屋根)
雨漏りで下地までボロボロに腐った例。
雨漏り原因
スレート屋根では棟廻りから雨水が入り込むのを防ぐため「隅切り(切落とし)」という加工が必要です。
「隅切り(切落とし)」とは、スレート本体の下部を14~15cmほど斜めにカットする加工で、雨水が棟の中心部へ流れ込まないように方向を変える(白色点線、横方向への流れ)ことができます。施工不良により隅切りが行われていない屋根は雨漏りしてしまいます。
(因みに、ガルバリウム鋼鈑屋根の場合は隅切り加工が出来ません、別の方法があります)
コーキングで応急処置しても雨漏りは直らない
棟部からの雨漏りは、棟包みと本体の隙間から雨水が入り込むことで起こります。
この例は、棟廻りから雨水が張り込まないように隙間をコーキングで埋める修理がされていましたが雨水の侵入を止めることができませんでした。
雨水は毛細管現象によって屋根材同士が重なり合う隙間からも入り込むからです。
安易な修理は症状を悪化させ、上写真のように下地までボロボロに腐らせてしまうため多額の費用が掛かってしまいます。
笠木の腐りを確認
棟包みを一度取り外してみると雨漏り原因が分かります。
修理で済むかどうかを判断できますので、棟包み内部の笠木の腐りを見てみてください。
修理で済まない場合は、屋根の取り換えが必要なので早めに対処した方が費用が安く済みます。
2:ケラバ部からの雨水侵入(スレート屋根)
ケラバからの雨漏りで下地が腐った例。
雨漏り原因
ケラバとは、切妻屋根の右端・左端にある部分で、ここから雨水が入り込むのを防ぐためスレート屋根では「肩落とし」という加工が必要です。
「肩落とし」とは、スレート本体の上部を10cmほど斜めにカットする加工ですが、この切断加工がされていないと雨漏りしてしまいます。
ケラバ廻りの隙間を埋めても雨漏りは直らない
ケラバ部分からの雨漏り原因は、メーカー施工規準を守った本体加工(肩落とし)がされていなかった施工不良が原因です。
ケラバ部分からの雨漏りは、ケラバ水切りとスレート本体の隙間をコーキングで埋めても雨漏りを止める事はできません。
これは棟部と同じで理由で、屋根本体の裏面を雨水が流れてくるからです。
雨漏り原因は、屋根本体の肩落としという加工がされていないからですが、この影響で雨水が屋根材の下にある防水シートへ流れ落ちる、同時に防水シートが劣化しているために起こります。
下地の痛みを確認する
雨漏りの原因を調べるには屋根本体を剥がす必要がありますが、構造上部分的に剥がす事は出来ないため全体を剥がす必要があります。
そのため下地が腐っているかどうかを確認する必要があります、状態によって葺き替え又はカバー工法のどちらかを選択することになります。
3:谷廻りの雨漏り。(スレート屋根・トタン屋根)
谷からの雨漏りで下地と骨組みの一部まで腐った例。
スレート屋根谷廻りの雨漏り原因
谷廻りからの雨水侵入を防ぐには、ケラバ部と同じ「肩落とし」という加工が必要です。
谷廻りの「肩落とし」は、スレート本体の上部を7cmほど斜めにカットして横方から流れてきた雨水を谷樋へ流す必要があります。
また、屋根の上を歩いた時の踏み割れによって谷廻りの屋根材にヒビが入り、その影響で雨漏りすることもあります。
このトタン屋根は、谷廻りからの雨水入り込み、下地と骨組みが腐り、屋根裏面の上裏も傷んでいました。
トタン屋根谷廻りの雨漏り原因
谷部からの雨漏りは、谷の金属板の腐食だけでなく雨水が屋根材を伝って谷部へきちんと流れ込むための加工がされていない場合にも起こります。
4:軒先からの雨水侵入(トタン屋根)
軒先部分は室内へ漏水してこないため雨漏りしていても気付きにくい部分です。
トタン屋根軒先の雨漏り原因
トタン屋根の軒先は、軒先唐草・鼻隠し・カッパという3種類の役物が合わさる部分で、その接続部分から雨水が入り込み、軒先にある木材の広小舞や下地を腐らせます。
軒先部分は見過ごされ易く、木材が傷んでいる可能性を考え丁寧に確認しなければ異常を見抜く事が出来ません。
トタン屋根は軒先部分が腐り易く、この屋根も軒先の下地だけでなく骨組みの根太と鼻隠し板まで腐っていました。
軒先が腐ったままカバー工法してしまうと屋根が剥がれる原因になります。
トタン屋根で屋根勾配が緩い場合は、横葺きタイプの屋根に葺き替えると雨漏りするので、勾配が緩い場合は縦葺きタイプのガルバリウム鋼鈑に葺き替える必要があります。
5:屋根本体の反り(口開き)(スレート屋根)
スレート屋根の雨漏り原因
反り(口開き)が起こる原因は、下地に杉板が使われたことによる強度不足や屋根を固定する釘の打ち込み過ぎなどによって起こります。
釘の打ち込み不足の場合は屋根のひび割れとなって現れますが、どちらも施工不良によるものです。
反りで開いた隙間から入り込んだ雨水は、毛細管現象で深部まで入り込み屋根の裏面に流れ込む事が雨漏り原因になっています。
反り(口開き)の影響で下地が腐り葺き替えになった例。
下地が傷んでいる事が分からない状態でカバー工法してしまうと屋根が剥がれ飛ぶ原因、再葺き替えの原因にもになります。
注意すべき事
屋根材が浮いて見える場合は、反り(口開き)が起きていないか確認してみてください。
これらの症状がある場合は修理しても直りません、室内への雨漏りや軒天(上裏)に雨染みが出来ているかも確認してください。
浮いた部分に釘を打って上から押さえれば良いと勧める業者もいますが、打ち込んだ釘穴から雨水が入り込む事で雨漏りの原因になります。
6:屋根の勾配不足で雨漏り(スレート屋根)
屋根勾配に合わないスレート屋根に葺き替えて雨漏り、下地がボロボロに腐った例。
雨漏り原因は毛細管現象
屋根勾配に合わない屋根が施工された事が雨漏り原因です。
屋根勾配が緩い屋根は、表面張力によって雨水が狭い隙間を上昇する毛細管現象によって屋根裏面まで入り込むことで雨漏りします。
緩勾配屋根が雨漏りしている場合は、屋根勾配に適した屋根材への葺き替えが必要です。
こちらの屋根は勾配に合わないスレート屋根に変えた事が雨漏り。修理を繰り返しても直らなかった例です。
勾配不足の屋根が雨漏りした場合は、何をしても直す事はできません。
7:屋根塗装による雨漏り(スレート屋根)
屋根塗装で雨漏りし下地がボロボロに腐った例。
雨漏り原因の確認方法
屋根塗装による雨漏りは、屋根材裏面に入り込んた雨水が排出される隙間が塗料で塞がれてしまうことで起こります。
屋根塗装後に雨漏りした場合は、きちんと塗装時に縁切りされていたか?
または、タスペーサーが使われていたかを確認してください。
縁切りされていない事が原因の場合は縁切りする事で直る場合もあります
雨漏りする度に屋根塗装していた屋根、下地だけでなく骨組みの一部も腐っていました。
対処方法
縁切りやタスペーサーが使われていたのに雨漏りした場合は屋根を取り換える必要があります。
下地の痛みを調査した上で工事方法を選択する必要があります。
雨漏りし易い屋根形状とは?
屋根には、新築時から雨漏りし易い形をした屋根があります。
複雑な形状をした屋根は、修理しても雨漏りが直らないことも多くあります。
捻じれ構造の屋根とバラバラの勾配屋根。
四面構成の屋根、それぞれの屋根面には2~6寸の屋根勾配が屋根が入り混じっている。
勾配問題だけでなく形状が複雑で屋根に捻じれもあるなど、屋根材の選択・雨仕舞が難しい屋根は雨漏り確率が非常に高くなります。この工事例へ
雨漏り原因を多く含んだ屋根形状。
8寸勾配と2.5寸勾配で構成されているだけでなく、煙突1個・ドーマー3個・トップライト3個・換気棟3個など雨漏り確率を高める要因が多くある屋根は工事が難しくなります。この工事例へ
トップライトが多い屋根。
超急勾配屋根で形も複雑、トップライトが6ヶ所・フラワーボックスが3ヶ所あり雨漏りしやすい構造なので高い技術が必要とご依頼頂いたスレート瓦。この工事例へ
多面体屋根。
2階の屋根は6寸勾配、14面で構成された多面体屋根。
谷や下り棟が多く、雨漏り原因になる要素が非常に多いため施工難易度が非常に高くなります。この工事例へ
緩勾配屋根。
勾配が緩いトタン屋根、ハウスメーカーが雨漏り修理した結果、元の心木無し瓦棒屋根と種類が違う心木有り瓦棒屋根に変更した事で下地まで腐った事例。この工事例へ
入母屋造りの屋根。
三層構造の入母屋屋根、入母屋造りの瓦屋根からガルバリウム鋼板への変更は、構造的な問題で施工難易度が非常に高くなります。この工事例へ
雨漏り修理はメーカー施工基準を守る専門会社へ
などと、思っていませんか?
雨漏りは、屋根材毎の正しい工事方法(屋根製造メーカーの施工規準)を守って工事をしている屋根の専門会社に頼まないと直りません。
雨漏り調査・修理を頼んでも直らない原因。
正しい工事方法を知らないから、修理方法が分からない
雨漏り修理は、屋根材毎の正しい工事方法を知らない会社に依頼しても絶対に直りません。
正しい工事方法を知らなけれ屋根に上がって見ても、どの部分の工事方法に間違いがあるのか特定できないため、どこをどう修正すれば良いかが分からないからです。
修理しても直らないのは、技術・経験不足。
例え、どの部分の工事方法が間違っていると特定できたとしても、正しい方法で修理するには屋根材や役物を加工して取り付ける必要があり技術と経験が無いとできません。
雨漏り修理に長年携わってきたという会社でも、親方の下で修行した経験が無ければ基本的な技術を身に着けていないため素人と変わらないレベルの会社も多くあります。
きちんとした経験や技術を持たず、コーキングを使った修理しかできない。
または、客寄せの口実として「屋根修理は比較した方が得!」などという歌い文句で客を集め、いい加減な工事しか出来ない修理会社も多いので注意が必要です。
雨水がどう排出されるか?を熟知している事も重要です。
降雨時の毛細管現象による影響だけでなく、風を伴った場合の風圧による影響で
■雨水がどこまで入り込むのか?
■どの高さまで雨水が噴き上がる可能性があるのか?
さらに、
■屋根材裏面への漏水
なども考えて調査・修理する必要があります。