
パミール屋根の見分け方
ニチハ パミール屋根は、1996年~2008年まで販売されていた屋根材です。
パミール屋根は「人に環境にやさしい完全無石綿をかかげ、優れた耐震性を約束する軽量化を実現」というコンセプトを元に、環境問題を考え1996年12月6日(平成8年) にいち早く無石綿化されましたが、無石綿化した影響で屋根のセメント基材同士の結合強度が低下。
その結果として、
● 屋根の剥がれ・剥離。
● 屋根材のズレ・抜け落ちによる落下。
という2つの症状が見られます。
見分け方1. 屋根の剥がれ・剥離。
パミール屋根は、屋根材本体がミルフィーユのようにボロボロに剥がれてしまう「層状剥離」という問題が発生するようになりました。
層状剥離は、無石綿化による新しい材料の特性、そして経年劣化による接着力の低下が主な原因と考えられています。
アスベストを含有していた頃のパミールは、アスベスト繊維が補強材の役割を果たし、強度と耐久性を保っていました。
しかし、ノンアスベスト化に伴い、これらの特性を維持するために新たな材料が使用されるようになりましたが、アスベストほどの強度や接着力がないため、経年劣化によって層間が剥離しやすくなっています。
石綿(アスベスト)に関する法規制について 2004年に石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止、2006年には同基準が0.1%以上へと改定されています。これに伴い各メーカーで製造されていた屋根材は完全無石綿化されています。 |
見分け方2. 屋根材のズレ・抜け落ち。
実例1:屋根がズレて落下しそうになっていた。
右写真は、テレビアンテナを取り付けにきてくれた工事会社の人が屋根が抜け落ちそうになっていたのを発見し「道路に落ちると危ないから」とテープで固定してくれた例です。
屋根傾斜面の延長線上に道路がある場合、屋根材がズレて落下する可能性があります。
落下してしまうと、下を通る人への人的被害や車への物的被害を及ぼす危険もあるので早急に対処する必要があります。
実例2:台風で剥がれ飛んでしまった。
パミール屋根がズレ落ちそうになっているので葺き替えたいと連絡頂きました。
工事着工までの間に落下しないよう簡易修理しておきましたが、台風で剥がれ飛んでしまい自宅カーポートが破損。
道路に面した側の屋根にズレはありませんでしたが、広範囲に剥がれ飛んでしまいました。施工例へ
屋根材のズレ・抜け落ちの原因は『釘の腐食』です。
パミールの販売時、屋根を固定する釘が無償配布されていましたが、その一部に問題がありました。
無償配布された釘がサビて腐食することで屋根材のズレや抜け落ちが起こるようになったのです。(配布期間:1997~2007 年)
写真をご覧頂くと分かりますが、釘がサビてボロボロになっています。
釘がサビて腐ってしまうと屋根本体を固定できなくなるため、ズレ落ちてしまうのです。
パミール釘が腐食してしまうのは、耐食性のために表面処理(ラスパート処理)したメッキ層の厚みが薄く、正常にメッキ処理された釘と比べて腐食の進行が早いことが原因です。
無償配布された「パミール用釘」について。(ニチハホームページに記載された内容を引用) この度、当社では屋根材「パミール」販売時に無償配布した「パミール用釘」(品番:JQ20)の一部に耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚の薄いものが混入していたことが判明しました。 耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚が薄い場合、正常にメッキ処理がなされた釘と比べ、経年に伴う腐食の進行が早まる可能性があり、屋根材のズレ・落下などが生じる可能性があります。 現在のところ人的被害の報告はありませんが、当社では、関係する省庁に概要を報告するとともに、安全処置が必要なものについては無償での処置を随時進めてまいります。 |
簡単にできるパミール屋根の見分け方
パミール屋根を見分ける方法として、まずは屋根の外観に注目します。
パミール屋根は、一般的に「層状剥離」が発生しやすく、表面が剥がれ落ちることがありますが、屋根の色が変色している場合も劣化の兆候です。
次に、屋根の釘を確認しましょう。
釘が錆びている、または浮き上がっている場合は、劣化が進んでいる可能性が高いです。
さらに、雨漏りの有無も重要なチェックポイントです。
特に天井や壁に水シミが見られる場合は、屋根材の劣化が原因かもしれません。
これらのポイントを確認することで、パミール屋根の状態を簡単に把握できます。
もし劣化が疑われる場合は、専門家に相談し、適切なメンテナンス方法を検討することをお勧めします。
パミール屋根はカバー工法か?葺き替えか?
スレート屋根の工事方法としてカバー工法も多く行われていますが、パミールの場合はお勧めできません。
その理由は、パミールは上写真のように、結露が起こり易い屋根材だからです。
写真を見ると、屋根材裏面に入り込んだ雨が流れているようにも見えますし、防水シート表面にも無数の水滴が付いているのが分かると思いますが、これら全ては結露によって起きています。
工事方法を左右する『結露』の問題。
実は、先に書いたパミールで起こる劣化症状は全て、この結露が原因で起きています。
上の写真では、パミールを固定する釘の頭はサビが発生した程度でした。
しかし、下写真のお宅では、腐って釘頭と胴部がバラバラになった釘が何か所もありました。
カバー工法は、古い屋根材の上に新しい屋根を被せる工事方法ですが、パミールの場合は古い屋根材を残したまま工事してしまうと問題が起こります。
カバー工法で下に残ったパミール本体は、結露で絶えず濡れ続けるため固定釘が腐蝕。
パミール本体の劣化は進行し続ける状態にあるということです。
さらに結露による影響は、新しい屋根を固定するために打たれた釘やネジまで腐らせてしまう可能性もあります(業者によって鉄釘・鉄ネジを使う事も多々あるからです)
パミール本体の劣化が激しいと、カバー工法する屋根材を固定するために釘やネジを打ち込みますが、その影響でパミール本体は割れてバラバラになってしまいます。
古い屋根材を残すことで得られるはずの断熱性や防音性なども、バラバラになったパミールでは期待できないため、屋根が重くなるだけで何のメリットもありません。
これらの理由から、パミールのリフォーム方法は、葺き替えが適切です。
パミール屋根のカバー工法。
カバー工法での実例。
「結露の問題」に記載しましたが、パミールへのカバー工法はあまりお勧めではありません。
お客様からお問合せ頂いた場合には、カバー工法する場合のリスクをお話した上で、
・あと何年くらい持たせたいのか?
・予算を抑えたいとお考えなのか?
など、お客様の意向を優先してお考え頂くようお話しています。
ただし、カバー工法の場合は最低限守るべき事として、新しい屋根材を固定する釘やネジで腐食するものが使用されてしまっては何の意味もありませんので最低限、腐食しない物を使う必要があります。
上記の写真は、カバー工法での実例です。
パミール屋根の葺き替え。
通常、屋根の葺き替え方法の手順は。
1.古い屋根を剥がす。
2.野地板(下地)を増し張り(重ね張り)
3.防水シート(ルーフィング)
4.新しい屋根材を施工。
という工程で進みます。
しかしパミールの場合は、年数がそれほど経っておらず野地板があまり傷んでいない事もあります。
その場合は、通常の葺き替えで必要な野地板の重ね張りが不要になり、そのぶん費用を抑えた葺き替えが出来る可能性もあります(ガルバリウム鋼板で葺き替える場合)。
上記の写真も、野地板の増し張りが不要だった実例です。
ニチハ パミール屋根の葺き替え方法。
パミール屋根は塗装可能か?
通常のスレート屋根であれば、10年程度経過した時に見栄えを良くするため塗装することもあるかもしれません。
しかし、パミールの場合は上写真のように層状に剥離しているため、補修や塗装をしても直ぐに剥がれてしまいます。
また、塗装する前にコケやカビ、汚れなどを除去するため高圧洗浄しますが、高圧洗浄をかけると脆くなった症状をさらに悪化させてしまいます。
塗装業者も塗装してもダメな事を知っているので屋根塗装を勧められる事は無いと思いますが、勧められた場合はお金が無駄になるので断るようにして下さい。
パミール屋根塗装後の状態。
パミール屋根に関するよくある質問
パミール屋根の保証問題。
パミール屋根は屋根本体のズレや落下、剥がれなどの問題が発生していますが、個人への保証は行われておらず対象は施工店のみになります。
お客様自身でメーカーに問い合わせても、直接の売買契約がないため補償されません。
通常の経年劣化であると言われ、実際に保証してもらえることはないようです。
上記した症状が見られる場合は早急に葺き替えることをお勧め致します。
屋根の「葺き替え工事」や「カバー工法」を行う際には、施工保証が付いているか、施工後の不具合に対する対応が明確になっているかを事前に確認することが大切です。
火災保険は適用される?
風災や雪災など、自然災害が原因で層状剥離が発生した場合、火災保険が適用される可能性があります。
ただし、経年劣化による層状剥離は火災保険の対象外となるため、注意が必要です。
保険適用については、保険会社に確認することをお勧めします。
また、保険請求の手続きには、被害状況の写真や業者による診断書などが必要となるため、事前に準備しておきましょう。
詳しくは損害保険協会のウェブサイトなどを参考にしてください。