ニチハ・パミール屋根で起こる2つの劣化症状。
1996年~2008年まで販売されていた、ニチハのパミール屋根(パミールA・パミールS・パミールM)で起きている問題を解説します。
1. パミール屋根の剥離・剥がれ。
剥離・剥がれ症状とは。
パミール屋根は、右写真のように層状剥離が起こり屋根材本体がボロボロに剥がれてしまうという問題が発生するようになりました。
剥がれた欠片が庭に落ちて気付くこともあるようですが修理や塗装が可能か?というお問合せも頂きます。
パミール屋根の屋根修理について。
他のスレート屋根であれば、屋根が割れたり欠けた部分をコーキングで修理することが可能です。
しかしパミール屋根の場合は、屋根本体がミルフィーユのように何層にも剥がれています。
そのため屋根表面にコーキングを塗って抑えようとしても、内側から剥がれ続けてくるので修理しても何の意味も無く無駄になるだけです。
パミール屋根の塗装について。
通常のスレート屋根であれば、10年程度経過した時に見栄えを良くするためメンテナンスとして塗装を考えるかもしれません。
しかし、パミール屋根の場合は屋根材が層状に剥離しているため塗装をしても直ぐに剥がれてしまいます。
また、塗装する前に屋根表面に付いたコケやカビ、汚れなどを除去するため高圧洗浄しますが、高圧洗浄をかけると脆くなった屋根が剥がれ続けるため症状をさらに悪化させてしまいます。
塗装業者も塗装してもダメな事を知っているので屋根塗装を勧められる事は無いと思いますが、勧められた場合はお金が無駄になるので断るようにして下さい。
パミール屋根の無石綿化による弊害。
屋根材「パミール」は、1990年に石綿含有タイプとして生産開始。
その後、石綿による肺がんや中皮腫を発症する発がん性などの環境問題を考え1996年12月6日(平成8年)に無石綿化されました。
しかし、無石綿化したことで屋根のセメント基材同士の結合強度が低下。
この影響で屋根材の剥離、剥がれが起こるようになってしまいました。
パミール屋根の保証問題。
パミールは屋根材のズレや落下、剥がれなどの問題が発生していますが、個人への保証は行われておらず対象は施工店のみになります。
お客様自身でメーカーに問い合わせても、直接の売買契約がないため補償されません。
通常の経年劣化であると言われ、実際に保証してもらえることはないようです。
ここに記載した症状が見られる場合は早急に葺き替えることをお勧め致します。
他社のスレート屋根が無石綿化した時期。
①:1991年に完全無石綿化された「セキスイかわらU」は、パミール屋根と同じように屋根材の剥離や剥がれの問題が起きています。
➁:2001年にはカラーベスト・コロニアル【クボタ(現KMEW)】が完全無石綿化された事で屋根が割れやすいという症状が出ていました。現在も販売中です。
石綿(アスベスト)に関する法規制の流れ。
2004年:石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止。
2006年:同基準が0.1%以上へと改定。
これに伴い、各メーカーで製造されていた屋根材は完全無石綿化されています。
2. パミール屋根の落下・滑落。
落下・滑落の実例。
実例1:屋根がズレて落下しそうになっていた。
右写真は、テレビアンテナを取り付けにきてくれた工事会社の人が屋根が抜け落ちそうになっていたのを発見し「道路に落ちると危ないから」とテープで固定してくれた例です。
屋根傾斜面の延長線上に道路がある場合、屋根材がズレて落下する可能性があります。
落下してしまうと、下を通る人への人的被害や車への物的被害を及ぼす危険もあるので早急に対処する必要があります。施工例へ
実例2:台風で剥がれ飛んでしまった。
パミール屋根がズレ落ちそうになっているので葺き替えたいと連絡頂きました。
工事着工までの間に落下しないよう簡易修理しておきましたが台風で剥がれ飛び自宅カーポートが破損。
道路に面した側の屋根にズレはありませんでしたが、広範囲に剥がれ飛んでしまいました。施工例へ
落下・滑落の原因は「釘の腐食」
パミール屋根の販売時、屋根を固定する釘が無償配布されていましたが、その一部に問題がありました。
無償配布された釘がサビて腐食することで屋根材のズレや落下が起こるようになったのです。(配布期間:1997~2007 年)
写真をご覧頂くと分かりますが、釘がサビてボロボロになっています。
釘がサビて腐ってしまうとパミール屋根を固定できなくなり、ズレて落下してしまいます。
パミール釘が腐食してしまうのは、耐食性のため表面処理(ラスパート処理)したメッキ層の厚みが薄く、正常にメッキ処理された釘と比べて腐食の進行が早いことが原因です。
無償配布された「パミール用釘」について。(ニチハホームページに記載された内容を引用) この度、当社では屋根材「パミール」販売時に無償配布した「パミール用釘」(品番:JQ20)の一部に耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚の薄いものが混入していたことが判明しました。 耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚が薄い場合、正常にメッキ処理がなされた釘と比べ、経年に伴う腐食の進行が早まる可能性があり、屋根材のズレ・落下などが生じる可能性があります。 現在のところ人的被害の報告はありませんが、当社では、関係する省庁に概要を報告するとともに、安全処置が必要なものについては無償での処置を随時進めてまいります。 |
3. パミール屋根の工事法に影響する『結露』
実はパミール屋根が落下する釘の腐食は、この結露が原因で起きています。
スレート屋根のリフォーム方法としては、屋根のカバー工法も多く行われていますが、パミール屋根の場合はお勧めできません。
その理由は、パミール屋根は右写真のように結露が起こり易い屋根材だからです。
写真を見ると、屋根材裏面に入り込んだ雨水が流れ出ているようにも見えますが雨水ではありません。
防水シート表面に無数の水滴が付いているのが分かると思いますが、これら全ては結露によって起きる現象です。
上の写真では、固定釘の頭はサビが発生した程度でした。
しかし右写真のお宅には、腐って釘頭と胴部がバラバラになった釘が何か所もありました。
カバー工法は、古い屋根材の上に新しい屋根を被せる工事方法ですが、パミール屋根の場合は古い屋根材を残したまま工事してしまうと結露が起こり続けます。
カバー工法で下に残ったパミール屋根本体は、結露で絶えず濡れ続けるため固定釘の腐蝕、パミール本体の劣化は進行し続ける状態にあるということです。
さらに結露による影響は、新しい屋根を固定するために打たれた釘やネジまで腐らせてしまう可能性もあります。
パミール屋根の適切なリフォーム方法とは。
カバー工法の場合、ガルバリウム鋼鈑屋根を固定するため釘やネジを打ち込みますが、パミール屋根本体の劣化が激しいとパミール屋根が割れてバラバラになってしまいます。
古い屋根材を残すことで得られるはずの断熱効果や防音性なども、バラバラになったパミール屋根では期待できず、ただ屋根が重くなるだけで何のメリットもなくなってしまいます。
こういった理由から、パミール屋根の適切なリフォーム方法は、葺き替えです。
1. パミール屋根の葺き替え
通常、屋根の葺き替えは手順は。
古い屋根を剥がす→野地板(下地)を増し張り(重ね張り)→防水シート(ルーフィング)→新しい屋根材を施工。という工程で進みます。
しかしパミール屋根の場合は、年数がそれほど経っておらず野地板があまり傷んでいない事もあります。
その場合は、通常の葺き替えで必要な野地板の重ね張りが不要になり、そのぶん費用を抑えた葺き替えが出来る可能性もあります。(ガルバリウム鋼板で葺き替える場合)
上記の写真も、野地板の増し張りが不要だった実例です。
スレート屋根(カラーベスト・コロニアル)に葺き替えたい場合の注意事項。 パミール屋根と同じスレート屋根(カラーベスト・コロニアル)にしたい場合は、通常の葺き替えと同じように野地板の増し張りが必要になります。 その理由:既存屋根下地は、新築時に比べ経年劣化で、たわみが大きくなるため、屋根材の口空きやあばれ・踏み割れが発生する原因になります。 |
パミールの葺き替え方法。
2. パミール屋根のカバー工法
「結露の問題」に記載しましたが、パミール屋根へのカバー工法はあまりお勧めではありません。
お客様からお問合せ頂いた場合には、カバー工法する場合のリスクをお話した上で、あと何年くらい持たせたいのか? 予算を抑えたいとお考えなのか? など、お客様の意向を優先してお考え頂くようお話しています。
ただし、カバー工法の場合は最低限守るべき事として、新しい屋根材を固定する釘やネジで腐食するものが使用されてしまっては何の意味もありませんので最低限腐食しない物を使う必要があります。
上記の写真は、カバー工法での実例です。
スレート屋根(カラーベスト・コロニアル)でのカバー工法について。
カラーベスト・コロニアルへの変更をお考えの場合、工事方法は葺き替えのみになります。
パミール屋根の上にコンパネ(構造用合板)を重ね張りし、その上にカラーベスト・コロニアルを取り付ける(カバー工法)工事を勧める業者がいますが、この方法は危険です。
その理由として、やはり結露の問題がありますが、コンパネを固定するために鉄くぎが使われてしまうと、釘が腐食して屋根が剥がれる原因になるからです。
そもそもこの工事法自体がメーカーで禁止されていますので業者に勧められても断るようにして下さい。
葺き替え時の禁止事項。(ケイミュー:カラーベスト・コロニアル) 既存屋根材の上に新しい野地板を直接重ねて下地を造る工法について。 ●既存屋根材の段差のため新しい野地板の継ぎ目に沈み込みが発生するため施工しないでください。 ●屋根材の口空きやあばれ・踏み割れが発生する原因になります。 |
また、既存屋根材の上に新しい屋根材を直接重ねて葺く工法を勧められた場合。
屋根下地の状況確認ができず、手直しもできないなど、経年劣化した屋根下地の上に屋根材を葺くことで口空きやあばれ・踏み割れが発生する原因になる施工が禁止されています。
パミール屋根の相談、専門知識を持つ専門家が対応させて頂きます。
お住まいの地域によって対応できない場合もございます。
「お客様の声」はコチラ。
パミール屋根の工事例。
1. パミール屋根の葺き替え工事例。
専門業者でないと屋根寿命に差が出ることを知ってしまい。
専門業者でないと屋根寿命に差が出る事を知り、他社との契約を破棄して当サイトへ。
パミール屋根は葺き替えが望ましい事も知ってしまい不安になった。施工例へ
層状剝離による痛みは酷くはありませんでしたが。
築11年で痛みが見え始めた片流れ屋根。ガルバリウム鋼板での重ね葺き(カバー工法)希望とのご依頼でしたが葺き替えに変更。施工例へ
結露でびしょびしょに濡れていました。
このページにある写真とほぼ同じ状況なので葺き替えたいとご依頼頂いた例。施工例へ
パミール本体を固定する釘も錆びていました。
近所数件が屋根がパミールで、数か月前工事が終わった近所の家の屋根に業者が何度も上がっているのを見て不安になった。「ガルバリウム専門の所に頼みたい」とご依頼頂き葺き替え。施工例へ
下地(野地板)が杉のバラ板、構造用合板を増し張り補強。
屋根材が剥がれているので出来るだけ早く葺き替えたいとの依頼例。施工例へ
もし、カバー工法していたら施工不良の原因に。
3社位に屋根を見てもらったがカバー工法を勧める業者が多い。結露が気になるので今の野地板の上のルーフィングを新しくしてガルバリウムにした方が良いのか?施工例へ
野地板を生かしたパミール葺き替え。
築20でスレート屋根をパミールに葺き替えたが、屋根が浮いてきている感じがあるので見てもらいたい。根材の剥がれ、浮きによる葺き替え。施工例へ
抜け落ちそうな屋根をアンテナ工事の人が止めてくれた。
屋根材が抜け落ちてきており道路に落ちると危ないから。施工例へ
この後、台風で剥がれ飛んだパミール屋根。
パミールを固定する釘が腐って今にも道路へ落ちそうになっていたが台風で剥がれ飛んでしまい自宅カーポートを破壊。ストーンチップでの葺き替え。施工例へ
東芝は当サイトで勧めた屋根材が良いと。
東芝のソーラーが載るパミールa。他社から2種類の屋根材を提案されたと電話相談。概算で良いので見積もりをお願いしますとお問い合わせ頂きました。東芝に問い合わせしたところ当サイトでお勧めした屋根材が良いと言われた。施工例へ
屋根がパミールなので葺き替えを考えている。
築12年のアパート、パミール屋根が気に入らないので同じニチハの横暖ルーフなど使いたくないとのご依頼でした。フッ素塗装断熱材付きヒランビーで葺き替え。施工例へ
屋根の隙間から雨水が漏れ出ていた。
「コロニアルがめくれている感じで、天井に染みがある」と連絡頂きましたが、実際の屋根はパミールで屋根材の隙間から雨水が漏れ出ていました。断熱材付きのダンネツトップ8-1で葺き替え。【施工例準備中(千葉)】
軒先木材の広小舞が傷んでいました。
パミール屋根の修理と葺き替え2種類の見積希望とのご依頼でしたが、修理が不可能なため表面に天然石の付いたディプロマットで葺き替えさせて頂きました。【施工例準備中(神奈川)】
ニチハの横暖ルーフに葺き替え。
屋根が傷んでおりパミールの可能性がある。隣の家が1年前に葺き替えていて同じような屋根にしたい。【施工例準備中(神奈川)】
特に異常無いとお伝えしたのですが。
「どうすれば良いか分からない」とのご依頼、担当業者さんが特に異常無いとお伝えさせて頂いたのですが、数か月後やはり葺き替えたいと連絡頂きました。【施工例準備中(神奈川)】
パミールをコロニアルグラッサに葺き替え。
築11年、複数社に見積依頼しガルバリウム、アスファルトシングルでのカバー工法またはガルバリウム、コロニアルでの葺き替えを検討中とご依頼頂きました。ケイミューのコロニアルグラッサで葺き替え。【施工例準備中(神奈川)】
2. パミール屋根のカバー工法(重ね葺き)工事例。
予算の関係でカバー工法を選択。
塗装屋からは塗装ではなくカバー工法を勧められている、他業者からも膨らんでいる所があると言われたので屋根はパミールなのかもしれません。【施工例準備中(埼玉)】
お客様のご希望でカバー工法に。
18年のコロニアルで本体の小さな欠片が落ちてきたとの事でしたが実際の屋根はパミール。屋根の欠けが全体に見られ抜け落ちる可能性がありました。お客様のご希望によりカバー工法で施工。【施工例準備中(神奈川)】
お客様のご希望でカバー工法に。
「ニチハのパミール屋根材です、できるだけ早く屋根を変えたい」とご依頼頂き、表面に天然石の付いたローマンに変更し換気棟も取り付けました。【施工例準備中(神奈川)】
費用を抑えるためのカバー工法。
「他業者からパミールの上に野地板を重ね張り、または通常のカバー工法を勧められている」とご相談頂いたお客様からの依頼。自然石粒のついたエコグラーニでのカバー工法。【施工例準備中(茨城)】
屋根寿命15年前後、屋根材としては短命に終わったパミール屋根。
原因は屋根材自体にありましたが、ガルバリウム鋼板への葺き替えには注意が必要です。
ガルバリウム鋼板は、屋根材自体に問題はありませんが、工事に問題があるからです。
工事後の施行トラブル、10年以内に再葺き替えになる事例が増えています。
ガルバリウム鋼鈑への葺き替え、施工重視で業者を選ぶべき理由。
パミール屋根のまとめ
・パミール屋根で起こる1番目の問題は、無石綿化されたことによって屋根がボロボロになる剥離・剥がれなどの劣化症状が起こることです。
・パミール屋根で起こる2番目の問題は、屋根を固定する釘の腐食による落下の危険性があること。
・パミール屋根は結露し易いという問題もあり、新しく葺き替える屋根材の選定や工事法にも影響を与えます。
・パミール屋根は塗装出来ない屋根材であり、表われた問題症状により屋根のリフォーム方法も変わるため、専門知識を持つ業者に依頼する必要があります。
・新しい屋根に葺き替える場合は、各屋根材メーカーの設計施工マニュアルを基準に適切な屋根材を選ぶ必要があります。
パミールの屋根リフォームは、専門知識と正しい施工法を知る屋根無料見積.comへ。
屋根相談もお気軽にお問い合わせください、専門家が対応させて頂きます。
お住まいの地域によって対応できない場合もございます。
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