屋根形状と勾配について
屋根形状について
屋根には様々な形がありますが、日本で最も多く使われている切妻屋根と寄棟屋根について説明します。
切妻屋根
切妻屋根は屋根の原型です。
形としては、屋根の両端を垂直に切り落としたもので、この両端を妻側と呼んでいます。
切妻屋根は、形が単純であるため施工し易く、他の屋根と比べて雨漏りが起こりにくいという特徴があります。
形的には軽快感があって良いのですが、重厚さに欠けます。
構造 | メリット | デメリット |
---|---|---|
二方向に傾斜があり、 屋根の両端が三角形になっている |
構造がシンプルで施工しやすい 小屋裏空間を広く取れる |
耐風性が弱い デザイン性がシンプル |
寄棟屋根
切妻屋根と並ぶ代表的な屋根形状で、大棟を中心に4つの屋根面を寄せた形から四注とも言います。
切妻屋根よりもやや重厚感があり、屋根の葺き替え工事価格は切妻よりも割高になります。
(割高になる理由は、棟部分で屋根材を斜めにカットしなければならず材料のあまりが多く出るためです。下方↓の図1参照)
構造 | メリット | デメリット |
---|---|---|
大棟から四方向に傾斜がある | 耐風性、排水性、耐震性に優れている デザイン性が高い |
小屋裏空間が狭くなる場合がある 施工費用が比較的高額になる場合がある |
「切妻屋根と寄棟屋根を徹底比較!」について詳しくはコチラ 構造の違い、施工難易度、寄棟屋根工事の注意点、必要な技術、ガルバリウム屋根施工時のポイントを解説。 |
入母屋屋根
上が切妻で、下が寄棟の形をした屋根の形をしています。
日本独自の屋根とも言われ、寺社建築などに多く見られるように重厚な感じの屋根ですが一般住宅では使われることが少なく、屋根面積の小さな家には向いていません。
施工が非常に難しい屋根構造のため高い技術が必要な屋根です。
日本の屋根は切妻屋根と寄棟屋根が多いと書きましたが、複雑そうに見える屋根であっても上図のように切妻同士や寄棟同士、または切妻と寄棟を合わせるなどして形づくられている屋根が多く見られます。
このように複雑な屋根形状になると見栄えは良くなるのですが、屋根の葺き替え工事する場合に棟や谷まわりで屋根材の無駄(↓図1参照)が多く発生するだけでなく手間も掛かります。
また、棟や谷の部分などで板金役物も多く必要になるため、屋根の形状が複雑になるほど(屋根面の数や出隅・入隅の数が多くなるほど)施工費用が高くなります。
[図1の説明=寄棟屋根でおきる屋根材の無駄]
通常はAとBのように屋根材が重なりますが、分りやすくするため重ねない状態で説明。
棟や谷部では、屋根材を斜めにカットして使います。
カットした残りの部分が半分よりも大きい場合は他の屋根面で使えますが、半分より小さい場合は廃棄するしかないため無駄が多く出るぶん屋根工事価格が高くなってしまいます。
屋根勾配(屋根角度)について
屋根の場合は、勾配という言葉を使い角度で表すことはありません。
1m(100cm)行って10cm上がれば1寸勾配、1m行って20cm上がると2寸勾配になります。
上の図2の場合は、4寸勾配になります。
ちなみに、屋根の勾配を角度で表すと下記のような角度になります。
1寸勾配→ 5.71度
2寸勾配→ 11.30度
3寸勾配→ 16.69度
4寸勾配→ 21.80度
5寸勾配→ 26.56度
6寸勾配→ 30.96度
7寸勾配→ 34,99度
8寸勾配→ 38,65度
9寸勾配→ 41.98度
勾配的には3寸勾配程度の屋根が一番多く見られるのですが、こうして角度で表してみると思っていたより意外と緩やかに感じられるのではないでしょうか?
ですが、実際に屋根に上がってみると下で見るのとは大違い、かなり印象が変わってくるもので、屋根の葺き替え時期に入った4寸勾配の屋根でも、苔(コケ)やカビ、風により飛来した土やほこりなどの影響で滑りやすくなっているため滑落する可能性が高くなり非常に危険な屋根状態になっています。
屋根の葺き替え工事金額は、屋根勾配が急になるほど高くなってしまいます。
その理由として、建坪や床面積からお客様が計算した屋根面積と実際の屋根面積とは違い、屋根の勾配による屋根の伸び率が計算されていないからです。
図2の赤線で書かれた部分。
家の建坪や床面積は水平面(底辺部分)で計算されますが、実際に屋根が葺かれる面は、屋根勾配が急になるほど面積が大きくなります(斜辺=赤線)。
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屋根の伸び率。
1寸勾配→ 斜辺 1.0049
2寸勾配→ 斜辺 1.0198
3寸勾配→ 斜辺 1.0440
4寸勾配→ 斜辺 1.0770
5寸勾配→ 斜辺 1.1180
6寸勾配→ 斜辺 1.1661
7寸勾配→ 斜辺 1.2206
8寸勾配→ 斜辺 1.2806
例えば、底辺が4mの場合。
屋根勾配が2寸であれば実際の長さは、4×1.0198=4.08m、5寸になると4.47mになります。
実際に下記のような家を例として計算。
床面から割り出した4m×8mで計算すると。
32㎡×2面=64㎡になりますが、5寸勾配の屋根であれば。
4.47×8m×2面=71.52㎡になり、床面から割り出した屋根面積とは7.52㎡(2坪以上)多くなってしまいます。
実際に屋根工事単価11,000/㎡で葺き替え工事をしたとすると。
64㎡×11,000/㎡=704,000円
71.5㎡×11,000/㎡=786,500になり。
床面積から割り出した屋根の概算見積り工事金額と実際の屋根面積を元に計算した葺き替え工事金額との間に82,500円の差が出ることが分かります。
また、5寸勾配の屋根であれば危険防止のため足場が必要になり、施行に手間も掛かるため実際にはさらに屋根の葺き替え工事金額がかさんでしまいます。