屋根の役物(部材)の主な種類と機能

屋根の役物とは、屋根の各部位を補強し、雨水の浸入を防ぐとともに美観を整える重要な部材で、屋根全体の性能と寿命に大きな影響を与えます。
適切な役物の選択と施工は、建物全体の保護と価値の維持に直結します。

屋根工事で施工トラブルが起きやすい部分
【上写真は、雨漏りし易いスレート屋根ガルバリウム屋根の役物(部材)名称です】
➊:ケラバ部。❷:棟部❸:棟違い部やケラバから降り棟への接続部。❹:谷部。❺:水平方向の壁際雨押え。❻:天窓廻り。❼:流れ方向の壁際雨押え。❽:降り棟部

主な種類と機能を詳しく見ていきます。

軒先部分の役物

軒先は雨水が集中する部分であり、適切な役物の使用が不可欠です。

軒先水切(軒先唐草)

屋根の軒先水切り(軒先唐草)軒先水切りは、軒先に取り付ける役物で、以下の機能があります。
・屋根工事の基本的な役割があり屋根剥がれを防止
・雨水の屋根材裏面や建物内部への侵入防止
・屋根材の端部保護
軒先水切りは、取り付けが悪いと強風で屋根が剥がれる原因になります

ケラバ部分の役物

軒先は雨水が集中する部分であり、適切な役物の使用が不可欠です。

捨板(水切)

屋根ケラバ部の捨板(水切)ケラバ捨板は、切妻屋根の端部に取り付ける役物で、以下の機能があります。
・雨水の屋根材裏面への侵入防止
・端部へ流れ込んだ雨水を雨樋へ流す役割
・屋根材の端部保護軒先水切(軒先唐草・スターター)
ケラバ捨板の上に屋根材を取り付けますが、取り付け方が悪いと雨漏り原因になります

ケラバ包み

屋根のケラバ包みケラバ包みは、切妻屋根の側面(妻側)に取り付ける役物です。
主な役割は
・屋根端部からの雨水侵入防止
・風による屋根材のめくれ防止
・屋根端部の美観向上
ケラバ包みは、屋根材や建物の外観に合わせて様々な素材やデザインが用意されています。
スレート屋根製造メーカー、ケイミューの屋根知識では、ケラバ包みの重要性と選び方について詳しく解説されています。

棟部分の役物

棟は屋根の最も高い部分で、雨水や風の影響を受けやすい箇所です。
そのため、特別な役物が必要となります。

棟包み

屋根の棟包み棟包みは、屋根の頂部を覆う役物です。
主な機能は以下の通りです。
・雨水の侵入防止
・棟部分の補強
・屋根全体の見栄えの向上
棟包みは、屋根材の種類や屋根の形状に合わせて選択する必要があります

壁際部分の役物

壁と屋根の接合部分は、雨水が侵入しやすい箇所です。
適切な役物の使用が必要不可欠です。

壁際水切り

屋根の壁際水切り壁際水切りは、壁と屋根の接合部に取り付ける役物です。
主な機能は
・雨水の壁面への流れ込み防止
・壁と屋根の隙間からの雨水侵入防止
・美観の向上
壁際水切りの適切な設置は、建物の耐久性向上に大きく寄与します
特に木造住宅では、雨水の侵入による腐食を防ぐ重要な役割を果たします。

雨押え(壁押さえ)

屋根の壁際雨押え(壁押さえ)雨押えは、壁際部分からの雨水侵入を防ぐ役割を持つ役物です。
主な役割は
・屋根と壁の接合部からの雨水侵入防止
・建物内部への雨水侵入防止
雨押えは、特に台風や豪雨時に重要な役割を果たします。

谷部分の役物

屋根の谷部分は、複数の屋根面が交わる場所で、雨水が集中しやすい箇所です。

谷板金

屋根の谷板(谷樋)谷板金は、屋根の谷部分に設置する金属製の役物で、主な機能は
・雨水の円滑な排水
・谷部分からの雨水侵入防止
・屋根材の端部保護
谷板金の取り付けや屋根本体の施工方法は、屋根の雨漏りに大きな影響を与えます
一般的には、耐久性の高いガルバリウム鋼板やステンレスが使用されます。

その他の重要な役物

換気棟

屋根換気棟換気棟は、屋根裏の換気を促進する役割を持つ役物です、主な効果は
・屋根裏の結露防止
・夏季の室内温度上昇抑制
・屋根材の寿命延長
適切な換気システムの構築が住宅の耐久性を向上させます。

雪止め

屋根の雪止め雪止めは、積雪地域で重要な役物です、主な機能は
・屋根からの落雪防止
・屋根材の保護
・安全性の確保
雪止めの種類と設置方法は、屋根の勾配や積雪量によって適切に選択する必要があります
金属製の棒状のものや、L字型のものなど、様々なタイプが存在します。

役物の種類 主な機能 設置場所
軒先水切り 屋根剥がれ防止、雨水侵入防止 屋根の軒先
ケラバ捨板 屋根裏面への雨水侵入防止 屋根の端部
ケラバ包み 壁面端部からへ雨水侵入防止 屋根の端部
棟包み 雨水侵入防止、棟部分補強 屋根の頂部
壁際水切り 壁面への雨水流れ込み防止 壁と屋根の接合部
雨押え 壁と屋根接合部からの雨水侵入防止 壁と屋根の接合部
谷板金 雨水の円滑な排水、侵入防止 屋根の谷部分
換気棟 屋根裏換気、結露防止 屋根の棟部分
雪止め 落雪防止、安全性確保 屋根面全体

屋根の役物は、ここに記載した以外にも多くの役物がありますが、それぞれが重要な機能を持ち、適切に選択・施工することで屋根全体の性能と耐久性を大きく向上させます。
屋根のメンテナンスや補修を行う際は、これらの役物の状態もしっかりと確認し、必要に応じて交換や補修を行うことが大切です。

屋根カバー工法を勧められたけど本当に大丈夫でしょうか?
下地が腐ってカバー工法できなかった理由は、役物(部材)の取り付け不良が主な原因でした。

屋根の役物(部材)が果たす重要な役割

屋根の役物は、建物の屋根において多岐にわたる重要な役割を果たしています。
その主な機能は、建物の保護、美観の向上、そして耐久性の確保です。
ここでは、これらの役割について詳しく見ていきましょう。

雨水の浸入防止

屋根の役物の最も重要な役割の一つが、雨水の浸入を防ぐことです。
特に以下の部分で重要な働きをします。
■ 棟:棟包みが雨水の侵入を防ぎます
■ 軒先:軒先水切りが雨水を効果的に排水します
■ ケラバ:捨板が雨水を効果的に排水します
■ 壁際:壁際水切り・雨押えが壁面への雨水の浸入を防ぎます
■ 谷:谷板金が複数の屋根面が交わる部分での雨水の処理を行います
適切に設置された役物は、建物内部への雨水の浸入を防ぎ、結果として腐食や漏水などの深刻な問題を予防します
これは建物の寿命を延ばし、修繕費用の削減にもつながります。

耐久性の向上

屋根の役物は、屋根全体の耐久性を大幅に向上させます。
主な効果は以下の通りです。
■ 雨風による屋根材の劣化を防ぐ
■ 紫外線による屋根材の劣化を軽減する
■ 屋根材の端部を保護し、剥がれや破損を防ぐ
適切な役物の使用により、屋根の寿命を通常の1.5倍から2倍程度延ばすことが可能だとされています
国土交通省の住宅の耐久性向上に関する指針でも、適切な屋根の役物の使用が建物の長寿命化に重要であると指摘されています。

防火性能の向上

屋根の役物は、建物の防火性能の向上にも寄与します。
主に以下の効果があります。
■ 火の粉の侵入防止:特に棟や軒先の役物が重要
■ 延焼の抑制:適切な不燃材料を使用した役物による火災の拡大防止
■ 屋根材の脱落防止:火災時の二次被害の軽減
適切な防火性能を持つ役物の使用により、建物の火災安全性を大幅に向上させることができます
これは特に密集市街地や木造建築物が多い地域で重要です。

まとめ:屋根の役物の総合的な重要性

以上見てきたように、屋根の役物は単一の機能だけでなく、多面的かつ相互に関連した重要な役割を果たしています。
適切な役物の選択と施工は、建物の保護、美観、耐久性、エネルギー効率、快適性、安全性など、多岐にわたる面で大きな効果をもたらします。

屋根の役物(部材)トラブルと対処法

屋根の役物は、経年劣化や気象条件によってさまざまなトラブルが発生することがあります。
ここでは、よく見られる屋根の役物のトラブルとその対処法について解説します。

雨漏りの発生と対策

屋根の役物トラブルで最も深刻なのが雨漏りです。早期発見と適切な対処が重要です。

雨漏りの原因特定

雨漏りの原因を特定するには、以下の点を確認します。
・役物の接合部分の隙間
・シーリング材の劣化
・役物自体の損傷や変形
・下地の腐食や劣化

雨漏りの応急処置と本格修理

応急処置として、防水テープやシーリング材で一時的に補修することができます。
ただし、これはあくまで一時的な対策であり、専門業者による本格的な修理が必要です。

本格修理では、以下の手順が一般的です。
・原因箇所の特定と損傷状況の確認
・必要に応じて役物の交換
・下地の補修や交換
・新しい役物の取り付けと適切なシーリング
・屋根全体の張り替え

錆びや腐食への対応

金属製の役物でよく見られるトラブルが錆びや腐食です。
これらは見た目の問題だけでなく、構造的な問題にも発展する可能性があります。

錆びの原因と予防法

錆びの主な原因は以下の通りです。
・雨水や湿気の長期的な接触
・塩害(海岸近くの建物に多い)
・酸性雨による金属の腐食
・保護コーティングの劣化
予防法としては、 定期的なメンテナンスと適切な塗装 が効果的です。
特に、耐候性の高い塗料を使用することで、錆びの進行を大幅に遅らせることができます。

錆びや腐食の対処法

軽度の錆びの場合は、以下の手順で対処できます
・ワイヤーブラシなどで錆びを除去
・サンドペーパーで表面を滑らかに
・防錆剤を塗布
・適切な塗料で仕上げ
ただし、 腐食が進行している場合は、部品の交換または屋根の張り替えが必要 になることがあります。
この場合は専門業者に相談することをおすすめします。

緩みや外れの修理

屋根の役物の緩みや外れは、風雨による被害を招く可能性があるため早急な対応が必要です。

緩みや外れの原因

主な原因として以下が挙げられます。
・強風による振動
・温度変化による金属の膨張と収縮
・不適切な施工
・経年劣化による固定部分の劣化

緩みや外れの修理方法

軽度の緩みの場合は、以下の手順で対処できます。
・緩んだ部分の確認
・適切な固定具(釘やビス)の選択
・固定具の打ち直しまたは増し打ち
・必要に応じてシーリング材の塗布
外れている場合は、専門業者による修理または屋根の張り替えが必要です。

台風や強風による被害と対策

台風や強風は屋根の役物に大きな負担をかけ様々な被害をもたらす可能性があります。

台風・強風による被害の種類

主な被害としては以下が挙げられます。
・役物の剥離や飛散
・固定部分の緩みや破損
・役物の変形や歪み
・雨水の吹き込みによる漏水

台風・強風対策の方法

被害を最小限に抑えるための対策として、以下が推奨されます。
・定期的な点検と補強
・耐風性能の高い役物の選択
・適切な固定方法の採用(例:釘の増し打ち)
・飛散防止ネットの設置(特に台風が予想される場合)
台風シーズン前の専門業者による点検と必要な補強作業 を行うことで、被害リスクを大幅に低減できます。

経年劣化への対応

屋根の役物も時間の経過とともに劣化していきます。適切な対応で建物の寿命を延ばすことができます。

経年劣化の兆候

主な経年劣化の兆候は以下のようなものです。
・表面の変色や退色
・材質の硬化や脆弱化
・シーリング材の劣化や剥離
・金属部分の錆びや腐食の進行

経年劣化への対策

経年劣化に対しては、以下の対策が効果的です。
・定期的な点検と早期発見
・適切なメンテナンス(清掃、塗装など)
・劣化部分の適時交換
・耐久性の高い材料への更新
計画的な改修や部分的な交換を行うことで、大規模な修繕を回避し、長期的にはコスト削減につながります。

トラブルの種類 主な原因 対処法 予防策
錆び・腐食 水分接触、塩害 除去、防錆処理、塗装 定期的な塗装、防錆処理
緩み・外れ 風雨、温度変化 固定具の打ち直し、部品交換 定期点検、適切な固定方法
雨漏り シーリング劣化、役物損傷 原因特定、補修、交換 定期的な防水処理、点検
結露 換気不足、断熱不良 換気改善、断熱材追加 適切な換気システム設置
台風・強風被害 固定不良、材質劣化 補強、交換 耐風性能の高い製品選択
経年劣化 時間経過、環境要因 部分修理、全体交換 定期的なメンテナンス

屋根の役物のトラブルは、早期発見と適切な対処が重要です。
定期的な点検と専門家によるメンテナンスを行うことで、多くの問題を未然に防ぐことができます。
また、高品質な材料の選択と適切な施工も、長期的な耐久性を確保する上で重要な要素となります。
家屋の大切な防御ラインである屋根の役物を適切に管理することで、建物全体の寿命を延ばし、快適な住環境を維持することができるのです。

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